がれきの中にたたずむイエス | 主イエスは必ず語ってくれる |
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イエス・キリストがすべてを津波によって流され、町全体ががれき化した大槌や陸前高田の中にたたずんだとしたなら、どのような言葉を発するでしょうか。また、愛する肉親と家や財産を失った人が主イエスの傍らに来て「イエス様」と言ったとしたなら、その人に主イエスはどのような語りかけをするでしょうか。 6月30日(木)〜7月1日(金)の両日京葉中部教会の山本光一牧師と共に支援物資を満載して新生釜石教会を訪れました。夜9時近くに到着しましたが、第一印象は津波に襲われた新生釜石教会の周辺がゴーストタウン化している、ということでした。次の日大槌町に行きました。町全体が津波で流され、火事も発生した町ですが鉄筋コンクリートの建物と鉄骨がむき出しになった建物がポツンポツンとあるだけで、あとはがれきが散在していました。多くの方が亡くなった、その光景を見て言葉を失いました。その時に思ったことは、ここに主イエスがたたずんだら、どのような思いを持ち、どのような言葉を発するだろうか、ということでした。 7月11日(月)〜13日(水)まで、千葉支区社会部のボランティアとして新生釜石教会に行きました。12日(火)には届けるものがあり大船渡教会に行きました。道を間違えたことから大船渡教会を訪ねる前に陸前高田に行く結果になりました。陸前高田は大槌より、もっと大規模な被害を受けました。その光景を見て「これは一体どのようなことだろう」、町全体をなめつくした津波の大きさに、ただただ驚愕するばかりです。車を降りてたたずんだ時に、やはり「主イエスがたたずんだらどのような言葉を発するだろうか」と思わざるを得ませんでした。その後大船渡に行きましたが、釜石同様に津波に襲われたところはがれきが山積みになっていました。 「百聞は一見にしかず」との諺がありますが、テレビや新聞で見るよりは受け止める印象は全く違います。7月11日(月)〜13日(水)に訪れた時のことですが夜があけ明るくなるとハエが飛んできます。会堂の床にコンパネをひいて、そこにビニールシートをひいて寝袋で寝るのですが、寝袋から出ている頭や顔、腕にハエが飛んできて、うるさくて寝ていられません。蚊がいて寝られない経験は何度もしましたが、ハエのために寝れない経験をしたのははじめてです。また、がれき特有な臭いがあります。被災した町の雰囲気はテレビや新聞では伝わってきません。 先に記しましたように被災した町、特に大槌や陸前高田に主イエスがたたずんだとしたなら、どのような言葉を発するか、また被災した人から問われたら、どのように答えるのか、そのことが頭から離れませんでした。ある牧師に尋ねました。神学者の言葉が答えとして返ってきました。ある牧師は「沈黙する」と言いました。またある牧師は「沈黙して、涙を流す」と言いました。7月11日は7時過ぎに釜石に着きました。カトリック釜石教会でグリーフケア(悲嘆した方のケア)についての講演が行われている、とのことで会場に行きました。講演会後講師のシスターに尋ねましたら「悲しいです」との言葉が返ってきました。その時瞬間思ったことは「悲しんでいる人は幸いである」との主イエスの言葉でした。シスターがそのことを意識して言ったかどうかは分かりません。 何人かの方が言ったことは理解できます。しかし、すさまじい光景を見て、そしてそこで犠牲になった方がいる、またすべてを失った方がいる、その方々に対して主イエスは何を語るのか、その問いは私にとって消し去ることは出来ません。 主イエスは当時の社会から疎外された人々、それを一般に「地の民(アムハーレッツ)」と言いますが、そのような人たちに積極的に関わりました。福音書ではそれぞれの状況の中で、その人が生きられるような行動をし、また言葉を語りました。 丁度7月10日の礼拝における聖書の箇所はルカによる福音書6章17〜19節でした。ガリラヤの山から下りてきた主イエスは「平らな所に立った」のです。そこで「ユダヤ全土とエルサレムから、またティルスやシドンの海岸地方から、イエスの教えを聞くため、また病気をいやしていただくために来ていた。汚れた霊に悩まされていた人々もいやしていただいた」のです。主イエスは病気や人生の諸問題を負って生きている人々や病気の人たちをいやしたのです。 とすれば今回の東日本大震災でがれき化したところに立って、また原発の事故により無人化した町に立って何かを語ってくださるに違いないのです。どのように語ってくださるのか、その答えはまだ見つかっていません。あるいは見つからないかもしれません。主イエスは必ず語ってくれる。耳を澄まして聞きたい、そうでなければ今回の震災で被災した人たちのこころのいやしはないのです。 |
新松戸幸谷教会牧師 吉田好里 |
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