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日本キリスト教団 新松戸幸谷教会

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コラムcolumn

学びの窓

2018/08  人のために役立つことを求める
列王記上3章1〜15節について

 イスラエルの第3番目の王はソロモンです。サウル、ダビデの後です。王位継承順から見ると王位継承者ではありませんでした。年齢の違うお兄さん達がいました。お母さんが違うアドニアというお兄さんが「わたしが王になる」と宣言しました。それを聞いたソロモンの母であるバト・シェバは一計を案じてダビデを王にしてしまうのです。

 ソロモンは後にエジプトの王ファラオの娘と結婚しました。エジプトとの同盟関係を結ぶという政治的な意味合いが強く、いわゆる政略結婚です。この女性を愛したとか、そのようなことは書いてありません、ただ結婚したと書いてあるだけです。

 ソロモンは3節「ソロモンは主を愛し、父ダビデの授けた掟に従って歩んだが、彼も聖なる高台でいけにえをささげ、香をたいていた」とあります。その具体的なことがギブオンで一千頭の犠牲を献げたが4節に書いてあります。

 父ダビデが遺言とした言葉2章3節「あなたの神、主の務めを守ってその道を歩み、モーセの律法に記されているとおり、主の掟と戒めと法と定めを守れ」、その言葉に生きたのです。神様は3章5節で「その夜、主はギブオンでソロモンの夢枕に立ち、『何事でも願うがよい。あなたに与えよう』と言われた」のです。
 それに対してソロモンは7節〜9節でわが神、主よ、あなたは父ダビデに代わる王として、この僕をお立てになりました。しかし、わたしは取るに足らない若者で、どのようにふるまうべきかを知りません。僕はあなたのお選びになった民の中にいますが、その民は多く、数えることも調べることもできないほどです。どうか、あなたの民を正しく裁き、善と悪を判断することができるように、この僕に聞き分ける心をお与えください。そうでなければ、この数多いあなたの民を裁くことが、誰にできましょう」と言いました。
 7節に「わたしは取るに足らない若者で、どのようにふるまうべきかを知りません」とありますが、ここは「わたしは小さな若者です。出るのも来るもの知りません」と訳せます。ソロモンが幾つの時であるかわかりません。13歳が成人式ですから、それ以降でしょう。ともかく若いときです。そのような若いときですから「どうか、あなたの民を正しく裁き、善と悪を判断することができるように、この僕に聞き分ける心をお与えください。そうでなければ、この数多いあなたの民を裁くことが、誰にできましょう」と言いました。
 ここは「あなたの民を裁くための聞く心を与えてください。良いこと悪いことを理解する心を与えてください。なぜなら誰が大事なあなたの民を裁くことが出来るでしょうか」と直訳的に訳してみました。ソロモンの率直な気持ちが表れています。若々しさと、神様に首部を垂れる、そのことを自らが厳しく守っていこうとする謙虚さがあらわれています。

 ここでとても興味深いのは、新共同訳で「数多い」と訳している言葉ですが、これは口語訳には「大いなる民」と訳しているのです。最近の英語訳のNKJV、TEVでも「あなたの大いなる民(this great people of yours)」と訳しています。元の言葉は「肝臓」を意味する言葉です。肝臓は臓器の中で一番大きい、あるいは肝臓は大事な働きをする、そのようなことから「神様の大事な民」と考えることが出来ます。
 神様の大事な民だから裁きを行うことに慎重でなければなりません。それで「裁くための聞く心、良い悪いを理解する心を与えてください」と言いました。裁くためには聞くこと、理解すること、これが大事ですか、若いソロモンは、それを求めたのです。このことはわたしたちにも言えるわけで、大切なことは「聞く心、理解する心」です。聞かないで一方的に話してしまう、聞いて理解しないで、自分の思いだけを押しつけることがよくあります。

 このようなソロモンに対して神様は11節以下で「あなたは自分のために長寿を求めず、富を求めず、また敵の命も求めることなく、訴えを正しく聞き分ける知恵を求めた。見よ、わたしはあなたの言葉に従って、今あなたに知恵に満ちた賢明な心を与える。あなたの先にも後にもあなたに並ぶ者はいない。わたしはまた、あなたの求めなかったもの、富と栄光も与える。生涯にわたってあなたと肩を並べうる王は一人もいない。もしあなたが父ダビデの歩んだように、わたしの掟と戒めを守って、 わたしの道を歩むなら、あなたに長寿をも恵もう」と言いました。
 「あなたに知恵に満ちた賢明な心を与える」とありますが、ここは「あなたの言葉に従って、わたしは賢い、そして理解する心を与える」と訳せます。それはソロモンが「聞く心、理解する心」を求めたところから、神様は賢い、思慮深い心、そして理解する心を与えたのです。それが新共同訳が訳している「知恵」なのです。ソロモンは富とか権力、長寿と言った自分の欲しいものを求めたのではないのです。そこを神様は評価したのです。それで「知恵と賢明な心」を与え、神の道に歩むならば長寿をも与えると言いました。
 このところに何を祈るか、何を求めるかが表されています。わたしたちは、今自分が一番欲しいもの、必要としているものを求めます。ソロモンはそうではなくて人に対して、自分がどうあらねばならないのか、その視点に立って人のために役立つことを求めたのです。それは知恵でした。その知恵は、人を生かす知恵だったのです。このような知恵を持ちたい。


 新松戸幸谷教会牧師 吉田好里


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